【2026年最新】親が老人ホームに入居した後の実家は80%減税できる?小規模宅地等の特例の要件を解説
高齢の親御様が介護付き老人ホームや特別養護老人ホーム等へ入居したことで、それまで住んでいた実家が空き家になってしまうケースは非常に多く見られます。将来、その実家の土地を相続する際、最大80%もの評価額を減額できる「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が使えるかどうかは、相続税の総額を左右する極めて重要な問題です。
かつては「亡くなった直前に住んでいなければ対象外」とされていましたが、税制改正により、老人ホームへ入居していた場合でも一定の要件を満たせば特例が認められるようになりました。今回は、老人ホーム入居時における適用の必須条件と、入居後の「実家の使い方」による違いについて、相続税専門の税理士が分かりやすく解説します。
目次
- ○ 1.親が老人ホームに入居していても特例が使える「3つの必須要件」
- ○ 2.【パターン別判断】老人ホーム入居前に「同居親族がいなかった」場合
- ○ 3.【パターン別判断】老人ホーム入居前に「同居親族がいた」場合
- ○ まとめ:老人ホーム入居後の「実家の使い方」が命取りに
1.親が老人ホームに入居していても特例が使える「3つの必須要件」
被相続人(亡くなった親御様など)が老人ホームに入居した後に亡くなった場合、その実家の土地に小規模宅地等の特例(80%減額)を適用するためには、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。
- 要件① 要介護・要支援認定等を受けていたこと: 老人ホーム等に入居する際、または相続が開始した直前において、介護保険法に規定する「要介護認定」または「要支援認定」などを受けていたことが必要です。
- 要件② 厚生労働省などが定める正当な施設に入居していたこと: 入居先が、老人福祉法や介護保険法等に規定する「特別養護老人ホーム(特養)」「有料老人ホーム」「認知症高齢者グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などの対象施設である必要があります。
- 要件③ 入居後の実家を「他人の居住用や事業用」にしていないこと: 親御様が老人ホームに入居した後、その空いた実家を第三者に賃貸したり、別の親族が勝手に住み始めたりしていないことが条件です。原則として「空き家のまま維持」するか、「生計を一にしていた親族が引き続き住む」状態でなければなりません。
2.【パターン別判断】老人ホーム入居前に「同居親族がいなかった」場合
親御様が実家で一人暮らしをしており、そこから老人ホームに入居した(入居前に同居人がいなかった)場合の特例の可否は、入居後の建物の状況によって以下のように分かれます。
- ① 空き家のまま親が死亡した場合 ⇒ 【80%減額が可能】
実家を空き家の状態で維持していた場合、残された「配偶者」や、持ち家のない子供(通称:家なき子)がその土地を相続すれば、特定居住用宅地等として80%の減額が適用できます。 - ② 入居後の実家に「生計を一にする親族」が入居した場合 ⇒ 【80%減額が可能】
親の仕送りや仕送りを受けている子供など、経済的にお財布を一つにしている親族が、親の入居後にその実家に移り住んだ場合です。この場合も「配偶者」や「その生計一親族」が土地を相続すれば、80%減額の対象となります。 - ③ 入居後の実家に「生計が別の親族」が入居した場合 ⇒ 【特例の適用は不可】
親とは完全に別生計で暮らしている子供や親族が、親の入居後に実家に住み始めてしまったケースです。これは前述の「被相続人等以外の居住の用に供してはならない」という要件に違反するため、小規模宅地等の特例(居住用)は一切使えなくなってしまいます。 - ④ 実家を第三者に賃貸(賃貸アパート等に)した場合 ⇒ 【50%減額に切り替え】
居住用(80%減額)としては使えなくなりますが、他人に貸し出したことで「貸付事業用宅地等」という別の枠組みに該当し、50%の評価減を受けられる可能性があります。ただし、相続開始前3年以内に新たに賃貸を始めた場合は、事業的規模(5棟10室以上)で行っているなどの例外を除き、この50%減額も使えなくなる「3年縛りルール」に抵触するため注意が必要です。
3.【パターン別判断】老人ホーム入居前に「同居親族がいた」場合
親御様が子供などの家族と一緒に暮らしており、そこから老人ホームに入居した場合の判定は以下の通りです。
- ① 残された同居親族(生計一)が引き続き住み続けた場合 ⇒ 【80%減額が可能】
親の入居後も、同居していた配偶者や生計一親族がそのままその家に住み続けて相続した場合は、問題なく80%の減額が可能です。実務上、最もスムーズに適用できるケースです。 - ② 入居後に同居親族が全員転居し、完全に空き家になった場合 ⇒ 【80%減額が可能】
親の入居に伴い、一緒に住んでいた家族も別の場所へ引っ越してしまい、実家が空き家になったケースです。この場合も、最終的に「配偶者」や「家なき子(持ち家のない親族)」がその土地を相続すれば、居住用として80%の減額を受けられます。 - ③ 入居に伴い生活費を分け、引き続きその親族が住み続けた場合 ⇒ 【80%減額が可能】
親の老人ホーム入居をきっかけに、残された家族が親の財布から独立して「生計別親族」となり、そのまま実家に住み続けたケースです。この場合であっても、「老人ホーム入居の直前において同居していた親族」という事実があれば、配偶者やその親族が相続して居住要件等を満たすことで、80%の減額が認められます。
まとめ:老人ホーム入居後の「実家の使い方」が命取りに
親御様が老人ホームに入居されても、実家の土地の相続税を大幅に安くできるチャンスは十分にあります。しかし、良かれと思って「誰も住まないのはもったいないから、別居している子供を住まわせよう」「一時的に人に貸し出そう」と実家の利用状況を変えてしまうと、その瞬間に何千万円もの減税メリットを失ってしまうリスクがあります。
また、入居先の施設が税法上の対象施設に該当しているかどうかの確認や、要介護認定のタイミングなど、専門的なチェックが欠かせません。親御様が老人ホームに入居された、あるいは入居を検討し始めた段階で、お早めに税理士へ実家の維持方法を相談されることを強くお勧めします。
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