相続税がかかる財産とかからない財産
一般的には当然財産だと感じるものに相続税がかからなかったり、相続人の財産だとは思いもよらないものに相続税がかかったりします。
このようなズレは、民法と相続税法のズレや、名義預金等の名義財産、みなし相続財産などによって生じてきます。
相続財産の整理をする際に、この記事を通じて、一度相続税がかかる財産とかからない財産を確認していただければと思います。
目次
相続税がかかる財産
相続税がかかる財産には、本来の相続財産とみなし相続財産の2種類があります。
本来の相続財産とは、被相続人が亡くなった日に所有していた金銭的価値のあるすべての財産のことを言います。
一方、みなし相続財産とは、被相続人の本来の財産ではありませんが、本来の財産と同様に経済的価値があると認められるもののことを言います。
それでは、それぞれの財産の詳細について、見ていきましょう。
本来の相続財産
本来の相続財産には次のようなものがあります。
①現金・預貯金(手許の現金や銀行・郵便局等にある普通預金、定期預金、当座預金など)
②土地(宅地、田、畑、山林、雑種地など)
③土地の上に存する権利(借地権、定期借地権、地上権など)
④家屋・構築物(家屋、駐車場など)
⑤有価証券(株式、出資、公社債、貸付信託・証券投資信託の受益証券など)
⑥事業用財産(売掛金、商品、機械装備品、自動車など)
⑦家庭用財産(家具、書画骨董品、貴金属、宝石、電話加入権、自動車など)
⑧その他の財産(貸付金、未収入金、ゴルフ会員権など)
銀行や郵便局の預金や土地・建物、証券会社に預けてある有価証券などは把握しやすいですが、その他のものは、本人が整理しておかないと、相続発生後に相続人が漏れなく把握するのは困難になります。
生前からの財産の整理・把握は、相続税対策だけでなく、相続発生後の相続人のストレス軽減の意味でも、とても有効です。
みなし相続財産
みなし相続財産には次のようなものがあります。
①生命保険金等
死亡に伴い支払われる生命保険金・損害保険金等のうち、被相続人が負担していた保険料に対応する部分
②退職手当金等
死亡に伴い支払われる退職金、功労金等
③生命保険契約に関する権利
被相続人が保険料を負担し、被相続人以外の者が契約者となっている生命保険契約で、相続開始時において保険事故が発生していないもの
④定期金に関する権利
被相続人が掛金又は保険料の全部又は一部を負担していた定期金給付契約(生命保険契約を除く)で、相続開始時において定期金の給付事由が発生していないもの
⑤保証期間付定期金に関する権利
被相続人が掛金又は保険料を負担していた定期金給付契約で、被相続人の死亡後、継続受取人に給付される定期金給付契約に関する権利
⑥契約に基づかない定期金に関する権利
退職年金契約に基づき、継続受取人に支払われる退職年金の受給権
⑦信託に関する権利
信託契約により取得する信託受益権
⑧その他の利益の享受
被相続人の遺言により受ける債務免除などの経済的利益
⑨特別縁故者への分与財産
相続人がいない場合に、被相続人と特別の縁故があった人に分与された財産
⑩低額譲受による利益
遺言によって著しく低い価格で財産を譲渡された場合の時価との差額
みなし相続財産は、生前に正確な金額まで把握することは困難なものが多く、また、そもそも相続財産になるという認識がないことも多いですので、専門家に相談しながら把握していかないと、漏れてしまうことが多いので注意が必要です。
相続税がかからない財産
相続税がかからない財産には、相続税法で一定の非課税枠を定め、その金額以内は非課税、その金額を超える部分は相続税がかかるものと、そもそも相続税のかからない財産として定められているものがあります。
それぞれについて、詳細を見ていきましょう。
非課税枠が定められているもの
相続税法で非課税枠が定められているものは、以下の通りです。
①相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
非課税金額=500万円×法定相続人の人数
相続人が受け取った死亡保険金の合計額が上記非課税金額以下である場合は、その全額が非課税となります。
一方で、非課税金額を超える場合には、超える金額に相続税がかかります。
例えば、法定相続人が4人で、受取保険金が3000万円の場合には、非課税金額が2000万円となり、これを超える1000万円部分に相続税がかかることになります。
ちなみに、保険金を複数の相続人が受け取っている場合の各相続人の非課税金額は、以下の計算式で計算することになります。
各相続人の保険金の非課税金額=非課税金額×その相続人の取得した死亡保険金の合計額÷被相続人のすべての相続人が取得した死亡保険金の合計額
②相続や遺贈によって取得したとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
非課税金額=500万円×法定相続人の数
相続人が受け取った退職手当等の合計額が上記非課税金額以下である場合は、その全額が非課税となります。
一方で、非課税金額を超える場合には、超える金額に相続税がかかります。
例えば、法定相続人が3人で、受け取った死亡退職金が5000万円の場合には、非課税金額が1500万円となり、これを超える3500万円部分に相続税がかかることになります。
ちなみに、死亡退職金を複数で受け取っている場合の各相続人の非課税金額は、以下の計算式で計算することになります。
各相続人の退職手当金等の非課税金額=非課税金額×その相続人が取得した退職手当金等の合計額÷被相続人のすべての相続人が取得した退職手当金等の合計額
そもそも相続税がかからない財産
相続税法で、相続税がかからない財産とされているものは、以下の通りです。
①墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨董的価値があり投資の対象となる物や、商品として所有している物は除外されます。
なお、相続開始後にお墓等を購入しても相続財産からは控除されません。
②宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
相続人が宗教団体、慈善団体等の公益事業を行っている場合には、その事業に使われることが確実なものについては、相続税が課税されません。
ただし、財産を取得した日から2年以内に公益の用に供しない場合は非課税とはなりません。
③地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金は非課税財産となります。また、支給される権利を相続した場合も非課税となります。
ただし、脱退一時金は除外されます。
④個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
被相続人が幼稚園等を経営している場合は、その土地や設備等が非課税となる場合があります。
適用を受けるには、継続運営や申告等がしっかり行われている等の一定の要件を満たす必要があります。
⑤相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの
相続により取得した財産を相続税の申告期限までに、国や地方公共団体、公益法人等に寄附した場合には、相続税は課税されません。
国や地方公共団体に対する寄附は無条件に非課税となりますが、特定の公益法人等への寄附及び特定の公益信託の信託財産とするための支出については、一定の要件を満たすものに限ります。
相続税がかかる財産とかからない財産の区別は、非常に複雑で難しいので、ご自分である程度おおまかに把握した上で、実際の相続税の申告に際しては、専門家のチェックを受けていただいた方がより安心かもしれません。
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