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紙に書くことの効用

自筆遺言の財産目録部分が自筆でなくても良くなるなど、パソコン入力とプリントアウトで済むことも多くなってきました。

一方で、あえて手間のかかる手書きには、別の効果があることも確かです。

相続に関連するものでいうと、エンディングノートなどは、あえて紙に手書きすることの効果を実感できるものかと思います。

今回は、紙に書くことの効用について、お話ししたいと思います。

目次

紙に書くことの効用

 昨今、やれAIだ、キャッシュレスだ、ペーパーレスだ、と騒がれています。
 小中学校でも、ノートや教科書や黒板ではなく、アイパッドを利用して授業を行う方向だとか。
 このような時代になり、紙にペンで字を書くなんて、まるで時代遅れじゃないかと思われるかもしれません。
 しかし、人間は生き物です。同じ言葉や文章を記録するにしても、パソコンに打ち込むのと筆記するのでは、脳の使われる部分が違います。
 脳の使われる部分が違うということは、私たちに与える影響も異なってくるわけです。
 もちろん、長文を書くにはパソコンの方が便利で効率的なのは事実ですが、単純に手を動かして字を書くという行為は、タイピングよりも脳に刺激を与えるため、脳が活性化するという点も見逃せません。
 このような時代になったからこそ、「あえて紙に字を書く」ということの意味合いが大きくなってきたとも考えられます。
 以下では、具体的にどのようなときに「紙に書く」行為を行えば仕事や日常生活に役立つのかをまとめてみました。

効用1. 達成したい目標があるとき

 少し前に、食べたものをすべて記録するというダイエット法がはやったことがあります。
 食べたものを一々記録することで、ダイエットしていることが頭の中に残りやすくなり、自然と食べる量が減ってくるわけです。
 この方法は、運動(走ったり歩いたりした距離や時間の記録、事務に行った日ややったトレーニングを記録するなど)や勉強(勉強した科目や時間、問題集などのページ数を記録する)など、なんにでも応用できます。
 他にも、朝が苦手な方は、毎日の起床時間を記録してみる。
 掃除が嫌いな方は、OOに掃除機をかけた、OOの部屋の窓を拭いた、トイレの便器を拭いた、などと記録してみる。
 読書を習慣付けたい方は、読んだ本とページ数を記録してみるなどいろいろ考えられます。

効用2. 嫌なことがあったときや、気分が塞いでいるとき

 日中あった嫌なことが頭の中でぐるぐる回ってしまい、眠れなくなったり食欲もなくなってしまうような時があります。
 明確な嫌なことがなくても、なんとなくモヤモヤしてしまってふさぎ込んでしまうような時もあるでしょう。
 このようなときには、言葉通り感情が定まらなくて頭の中でぐるぐる回ってしまい、その状態から抜け出せなくなってしまっているわけです。
 例えば、仕事上のミスで上司にひどく怒られて、気が滅入って何も手につかなくなってしまったとします。
 辛くて、仕事をやめたくなってしまいました。
 このような時は、次のように紙に書いていきます。

具体的な記載例

・ ああ、気分悪い。どうして仕事でミスしてしまったんだろう。
・ 書類の確認を怠ったのが原因だな。
・ どういうところの確認を重視すればよかったのかな。
・ OOに注意しないといけないな。次からは気を付けよう。
・ どうして上司はあんなにひどい言葉で怒る必要があったんだろうか。
・ 自分のミスのせいで、取引先に迷惑をかけて謝るのは上司の役割だからだろう。下手すると顧客を失うかもしれない。上司にも辛い思いをさせてしまったな。
・それにしても、あんな言い方はないのでは?
・いつもは親切にいろいろ教えてくれる上司だから、きっと体調が悪かったり、他に抱えている事情があったのかもしれないな。
・今回は非を認めて謝って、次からはミスをしないよう気を付けると反省を伝えよう。

書いてみた結果

 ここまで書くと、もう気分がすっきりしているのではないでしょうか。
 自分の頭の中で回っているものを一度文字に起こして、それに対して客観的な意味づけを与えることで、頭の中が整理されます。
 中学生や高校生の時の、数学の問題を解くときのことを思い出してみてください。
 いきなり答えを回答欄に書きますか?答えを導き出すために途中経過や計算過程を書いていかないと、正解にたどりつかないと思います。
 仮に正解にたどり着かないとしても、テストでは部分点がつきます。
 そういうイメージです。完全に問題が解決しなくとも、紙に書きだすことで、今のモヤモヤした状況から一歩前進できるということです。

効用3. いいアイデアを出したいとき

 ベストセラービジネス本に、若手起業家前田裕二氏の「メモの魔力」があります。
 前田氏はそこで、メモで知的生産性を高めることについて熱く語っています。
 自他ともに認める「メモ魔」である前田氏のメモの使い方については著書を参考にしていただくとして、メモを取るすなわち紙に書くことを、創造的な仕事につなげていく手段としている点が一歩進んでいると思います。
 何もないところから新しいアイデアは出てきません。
 人との会話や会議などで出た話をメモに残さないと、有用な話だったと思ってもすぐに人は忘れてしまいます。
 メモを取らずに聞いていると、一見話に集中しているように見えますが、一番インパクトがある話題は覚えていたとしても、それ以外のたくさんの情報はその場で消えてしまいます。
 もったいないと思いませんか?
 書くことで、時間がたっても思い出すことができて、そこから一歩進めてどのように役立てていけるか、ビジネスに使えるか、考える材料になるのです。
 前田氏は、紙に書くことは外部ハードディスクと同じ、と言っています。「記録」は外部ハードディスクに任せて、自分の脳は創造的な仕事ことに目いっぱい使いましょう、ということです。

まとめ

 紙に手書きで書くことには、様々な効用があります。
 相続の生前対策としては、エンディングノートを作成してみるところから始めるのが、一番だと思います。
 その際に、パソコンで作成するのでなく、一つ一つ考えながら紙のノートに手書きしてみると、こうした手書きの効用を実感できるのではないかと思います。
 エンティングノートの作成は、単にすでにある情報を整理してまとめるだけの作業ではなく、自分と相続人の過去・現在・未来を考えていく創造的な活動です。
 時にはそれまで思いもよらなかった発見や、ものの見方をするようになるかもしれません。
 是非、自分に合ったエンディングノートを探して、手を動かして考えてみましょう。

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