不動産購入は法人と個人のどちらが有利か?
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不動産購入は法人と個人のどちらが有利か?
不動産を購入する場合、個人で取得すべきか自身が経営する法人で取得すべきかは、個人と法人に対する税金や相続の取り扱いが異なるため、慎重に検討する必要があります。
家賃収入に対する税率
個人と法人では、家賃収入に対する所得区分が異なります。個人事業では所得税、法人では法人税が課されます。
所得税は累進課税制度となっており、課税所得が増えるほど税率が高くなる仕組みとなっています。
個人事業者はこの所得税に加え「課税所得金額×10%+5,000円」の住民税を納付する必要もあります。
<平成27年分以降の所得税率>
課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
法人税は所得税とは異なり、ほぼ一定率となります。
区分 税率
中小法人の年800万円以下の部分 15%
中小法人の年800万円超の部分 23.20%
法人にかかる税金は、上記の法人税に加え、地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税などが課せられます。これらを合計し、利益額に対して実質的にどのくらい税金がかかるのかを計算したものを「法人実効税率」といいます。
「法人実効税率」は会社の所在地や規模、所得によって異なりますが、約30~35%程度となります。
所得税と法人税を単純に比較した場合、個人所得が800万円~1,000万円をこえる場合には、法人税の税率の方が低くなるため、法人の方が有利と言えます。
不動産を売却する場合の税率
所有する不動産を売却し利益が生じた場合には、個人では譲渡所得税、法人では法人税が課されます。
個人に課される譲渡所得税は分離課税となり、他の所得とは分けて課税されます。
譲渡所得税は売却する不動産の所有期間によって次のように課税されます。
長期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で所有期間5年超)の場合
合計20.315% (所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)
短期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で所有期間5年以下)の場合
合計39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)
法人税と比較した場合、所有期間が5年超の場合は個人の方が有利、5年以下の場合は法人の方が有利ということになります。
不動産投資を目的とし、短期での売却が想定される場合には売却期間から判断を行うのも一つの方法です。
相続対策として購入する場合
相続税は相続によって取得した財産に課されます。
現預貯金の場合には、そのままの金額が相続税評価額となりますが、不動産の場合には路線価等を用いて相続税評価額を計算するため、相続税評価額は時価よりも低く設定されます。
現預貯金を多く保有している場合には、不動産の購入によって財産を圧縮することが期待できます。
しかし、次のような注意点があります。
・個人での注意点
個人で所有する場合、財産圧縮効果が一番高いのが不動産購入時となります。
賃貸物件等の収益不動産の場合、家賃収益が財産として積みあがっていき、結果として資産が増える可能性があります。
・法人での注意点
法人で所有する場合、購入から3年以内は時価で評価しなければならないため、財産の圧縮効果はありません。
小規模宅地等の特定適用
小規模宅地等の特例の適用(一定の自宅用土地、事業用の土地、貸付用の土地等の評価額を50%~80%減額できる制度です。)は、個人が所有している宅地等のみ適用対象となります。
これから取得する不動産にこの特例の適用を考えている場合には、個人で取得するしか適用を受けることは出来ないこととなります。
不動産を生前贈与する場合
所有している不動産を生前贈与で子へ承継させるには、法人所有の方が有利です。
個人が生前贈与を行う場合、受贈者には贈与税が課されます。
毎年少しずつ共有持ち分の一部を贈与するという方法もありますが、贈与の度に登記手続きが必要となり、登録免許税等の税金が発生します。
法人の場合は、不動産を所有している法人の株式の贈与となりますので、登記の手続きは必要無く、登録免許税等の税金も発生しません。
不動産の所有目的を検討して、最善の選択をしていきましょう。
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