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所得税の準確定申告

目次

所得税の準確定申告

・確定申告をしなければならない被相続人が年の途中で死亡した場合には、その相続人は、その年の1月1日から死亡した日までに確定した被相続人の所得金額及び税額を計算して、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、確定申告に準じた確定申告 (以下、「準確定申告」)をしなければなりません

・損失申告書を提出することができる被相続人が、その年の翌年1月1日から損失申告書の提出期限までにその申告書を提出しないで死亡した場合には、その相続人はその相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に損失申告書を提出することができます

・被相続人に確定申告義務がない場合でも、予定納税額や源泉徴収税額の還付が受けられる場合には、その相続人は、還付を受けるための準確定申告書を提出することができます。この場合の提出期限は、その相続の開始の日の翌日から5年を経過する日までとなります。

準確定申告および相続人の相続開始年における所得金額

(1)不動産所得

被相続人の準確定申告における不動産所得の金額は、相続開始までに生じた不動産の所得金額となります。
また、不動産所得を生ずる財産を承継した相続人は、準確定申告以後に生じた不動産の所得金額により計算します。
確定申告期限までに不動産所得を生ずる財産の遺産分割が確定していない場合、その相続財産から生ずる所得は、各共同相続人がその相続分に応じて帰属するものとして申告します。
したがって、遺産分割協議が整わないため、共同相続人のうち特定の人がその収益を管理している場合でも、分割が確定するまでは、共同相続人がその法定相続分に応じて申告することになります。
なお、遺産分割協議が整い、分割が確定した場合であっても、未分割中の所得の帰属に影響を及ぼすものではないため、分割の確定を理由とする更正の請求又は修正申告を行うことはできません。

(2)事業所得

被相続人の準確定申告における事業所得の金額は、相続の開始までに生じた事業所得の金額となります。
また、事業を承継した相続人は、準確定申告以後に生じた事業所得の金額となります。

(3)配当所得

被相続人の準確定申告に計上する配当所得の金額は、配当金の支払いを受けたものだけではなく、配当基準日が相続開始日以前の未払配当や配当期待権も含まれます。

(4)給与所得、公的年金等の雑所得、退職所得

被相続人に係る給与等、公的年金等及び退職手当金等で、支給日が死亡日以後のものについては、本来の相続財産となり、所得税は非課税となります。
被相続人に係る未支給年金、被相続人の死亡後3年経過後に支給が確定した退職手当金等については、その支給を受けた相続人の一時所得として所得税が課されます。

(5)譲渡所得

譲渡所得を計上すべき時期は、原則として、その資産の引き渡しがあった時期となりますが、その資産の譲渡に関する契約の効力発生日を選択することもできます。
そのため、被相続人が譲渡契約をした後、資産の引渡し前に死亡した場合は、相続人が被相続人の準確定申告で申告するか、その資産を承継した相続人の確定申告で申告するかを選択することができます。

準確定申告及び相続人の相続開始年における必要経費

(1)固定資産税

業務の用に供される固定資産税の必要経費への算入時期は、原則として、納税通知等により納付が具体的に確定した時となります。
したがって、相続開始前に納税通知書が未達である場合は、その固定資産税相当額は被相続人の準確定申告の必要経費に算入することができません。
この場合は、その資産を承継する相続人の確定申告の必要経費に算入します。
相続開始前に納税通知書が送付されている場合に、被相続人の準確定申告の必要経費に算入する額は、固定資産税の全額、納期到来分、実際の納付額のいずれかでかまいません。
この場合、その資産を承継する相続人の必要経費に算入する金額は被相続人の必要経費に算入した金額を除いた金額となります。

(2)事業税

事業税の必要経費への算入時期は、原則として、納税通知等によりその納付すべき時期が確定した時です。
したがって、相続開始前において事業税の納税通知書が未達の場合は、事業を承継する相続人の必要経費に算入します。
相続人が事業を承継しない場合(事業を廃止した場合)は、下記算式による見積額を被相続人の準確定申告の必要経費に算入するか、事業税の賦課決定のあった日の翌日から2カ月以内に更正の請求をすることができます。
  
事業税の見込額=(A+B-C)×事業税の税率/1+事業税の税率
A・・・・事業税の課税見込額を控除する前のその年分の事業に係る所得の金額
B・・・・青色申告特別控除額
C・・・・事業主控除額(月按分)

(3)減価償却費

被相続人の準確定申告の必要経費に算入する減価償却費の額は、1月1日から相続開始日までの月按分になります。
事業を承継した相続人の必要経費に算入する金額は、相続した日から年末までの月按分になります。
事業を承継した相続人は相続した減価償却資産の取得時期、取得価格、耐用年数は引き継ぎますが、償却方法は引き継ぎません。
したがって、建物の場合、被相続人が旧定率法を選択している場合であっても、相続人は定額法を適用することとなります。

※ 取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産については、一定の要件の下でその減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を、その業務の用に供した年以後3年間の各年分において必要経費に算入することができます。

準確定申告における所得控除

(1)医療費控除

準確定申告では、死亡日までに被相続人が支払った医療費が医療費控除の対象となります。
死亡後に相続人が支払った医療費は準確定申告の医療費控除に含めることはできません。
なお、その支払った相続人が被相続人と生計を一にしていた者である場合は、その相続人のその年分の医療費控除の対象とすることができます。
また、その生計を一にしていた相続人が被相続人の死亡した年分の医療費の全額を支払っていた場合には、その全額をその相続人のその年分の医療費控除の対象とすることができます。

(2)社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除

準確定申告では、死亡日までに被相続人が支払った保険料等の額が控除の対象となります。

(3)配偶者控除、扶養控除の判定

被相続人の配偶者控除、扶養控除等の判定は、死亡日の現況によるその年1月1日から12月31日までの合計所得金額の見積り額により行います。 
不動産所得や事業所得等の継続して生ずる所得や未分割遺産に係る所得については、法定相続分により算出して所得金額を計算しますが、死亡時点で予期されない譲渡所得等については、所得に含めなくても差し支えありません。
被相続人の配偶者がその年分の所得税を申告する場合、準確定申告において扶養控除になった子が、その配偶者の扶養控除の対象となるかどうかについては、その年の12月31日の現況により判断します。
その時点でその子が扶養控除の要件を満たしている場合には扶養控除の適用を受けることができます。
なお、その配偶者が寡婦(寡夫)の適用を満たしている場合には、寡婦(寡夫)の適用を受けることもできます。
また、被相続人の準確定申告において配偶者控除の対象となった者が、その年分に他の者の扶養親族となった場合には、扶養控除の対象とすることができます。

準確定申告における予定納税

予定納税とは、その年の5月15日において確定している前年分の所得金額や税額を基にして計算した金額(予定納税額)が15万円以上である場合、その年の所得税の一部をあらかじめ納付する制度をいいます。
予定納税額は、予定納税基準額の3分の1の金額を、第一期分(7月1日~31日)、第二期分(11月1日~30日)として納付することとなっており、納税地の所轄税務署長からその年の6月15日までに書面で通知されます。
ただし、死亡日がその年の6月30日を経過している場合には、予定納税額が通知されている場合であっても、予定納税額を納付する義務はありません。

準確定申告の提出先

準確定申告書の提出先は、被相続人の死亡時の納税地の所轄税務署長になります。
相続人が2人以上いる場合、各相続人の連名による「死亡した者の令和〇〇年の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」を添付します。
ただし、相続人が別々に申告する場合は、遅滞なく他の相続人に対し、その申告書に記載した内容を通知しなければなりません。

準確定申告に係る納付と還付

(1)納付する場合

準確定申告により納付する所得税の納付期限は、その準確定申告書の提出期限となります。
相続人が2人以上いる場合、納付する所得税の額は、その相続分により按分した金額となります。
なお、相続人のうち相続によって得た財産の額がその按分された税額を超える者があるときは、その相続人は、その超える価額を限度として、他の相続人の税額を納付する連帯責任を負います。
  
(2)還付される場合

準確定申告により所得税が還付される場合、相続人が2人以上いる場合は、その還付金を相続分により按分します。
ただし、共同相続人のうち代表者を決めて、その代表者が還付金を受け取ることもできます。
この場合、準確定申告書に代表者以外の共同相続人の「委任状」を添付する必要があります。
なお、この還付金は、被相続人の未収金として相続財産になります。

所得税に関する主な届出書

被相続人の事業を引き継ぐ相続人は「個人事業の開廃業等届出書」や「所得税の青色申告承認申請書」等を提出しなければなりません。
 
(1) 個人事業の開廃業等届出書

相続人は、被相続人の死亡した日から1カ月以内に「個人事業の開廃業等届出書」を被相続人の所轄税務署長に提出し、被相続人の事業を引き継ぐ相続人は、原則として新たに事業を引き継いだ日から1カ月以内に「個人事業の開廃業等届出書」を相続人の所轄税務署に提出します。
 
(2)所得税の青色申告承認申請書

「所得税の青色申告承認申請書」については、原則として、青色申告を選択する年分の3月15日まで、また、1月16日以後に新たに事業を開始する場合には、その事業を開始した日から2カ月以内に提出しなければなりません。
ただし、青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続人より承継した場合は、相続開始を知った日(死亡日)の時期に応じて、一定の期間内に提出すれば、その年分から青色申告の適用を受けることができます。
  
※提出期限が土・日曜日・祝日等にあたる場合は、これらの日の翌日が申告期限となります。
これらの提出期限までに遺産分割が確定せず、被相続人の事業を承継する相続人が確定していない場合は、各相続人が所得税の青色申告の承認申請書を提出します。
 
(3)給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書

相続人は、被相続人が死亡した日から1カ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を被相続人の所轄税務署に提出します。
被相続人の事業を引く継ぎ、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設した相続人は、開設日から1カ月以内にその事務所等の所轄税務署長(移転の場合は、移転前と移転後それぞれの事務所等の所在地の所轄税務署長)に提出します。

(4)青色専従者給与に関する届出書

被相続人の事業を引き継いだ相続人が、青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとするときは、原則として、相続開始の日又は専従者となった日の翌日から2カ月以内に「青色専従者給与に関する届出書」を相続人の所轄税務署長に提出します。

(5)源泉所得税の納期の特例の承認に関する届出書

被相続人の事業を引き継ぎ、源泉徴収の納期の特例制度※の適用を受けようとする相続人が、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署長に提出した場合、その提出した日の翌月に支払う給与等からこの特例の適用を受けることができます。
※給与の支払人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、半年分まとめて納めることができる特例です。

(6)所得税のたな卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書

被相続人の事業を引き継ぎ、たな卸資産の評価方法及び減価償却方法の償却方法を選択する相続人は、「所得税のたな卸資産の償却方法、減価償却資産の償却方法の届出書」を、確定申告期限までに所轄税務署長に提出することとなっています。
この届出書を提出しない場合、たな卸資産は最終仕入原価法、減価償却資産は定額法により評価することとなります。

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