遺産が未分割の場合の相続税の申告方法
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遺産が未分割の場合の相続税の申告方法
相続税の申告期限までに遺産の分割が行われなかった場合には、民法上の相続割合(法定相続分)に応じて相続税額を計算することとなります。
未分割のまま仮申告をし、分割が決まり次第改めて申告し直すことになります。
未分割のまま申告となった場合には、以下の特例を適用することができません。
①配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者は相続分が法定相続分(又は1億6千万円のどちらか多い金額)以下である場合には、相続税がかかりません。
しかし分割が決定していない場合には、その決定していない部分については、この特例は適用されません。
②小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
相続又は遺贈によって取得した宅地のうち、一定の要件を満たせば、居住用宅地であれば330㎡まで80%、不動産貸付事業用宅地であれば200㎡まで50%の評価減ができます。
しかし、分割が決定していない場合にはこの特例の適用は受けられません。
③農地等についての相続税の納税猶予
農業を営んでいた被相続人から、農地等を相続等により取得した相続人が、その農地において引き続き農業を営む場合には、一定の要件の下で相続税が猶予されます。
この特例を受けるためには、申告期限までに農地等が分割されている必要があります。
④物納
物納とは、延納によっても金銭で納付することができない事由がある場合に、一定の相続財産を金銭に代えて納めることをいいます。
収納される時までに分割が決定していない相続財産の物納は原則として認められていません。
①、②の特例については、申告期限から3年以内に分割が決定すれば、更正の請求をすることにより適用が可能となります。
ただし、当初申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出していることが要件となります。
申告期限から3年を経過してもなお遺産分割が決定しない場合には、申告期限後3年を経過した日の翌日から2カ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。判決確定等の日から4ヶ月以内に遺産が分割されれば、これらの特例を受けることが出来ます。
相続税の申告期限までに遺産分割が決定しなければ、上記のような税制面だけでなく様々な問題が生じるリスクがあります。
特例を使い、相続税の負担を抑えるためにも、早くから財産整理や相続人の話し合い等、できることから進めておきましょう。
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